グレーな彼女と僕のブルー

 考えたところで答えなど出ないので、黙って口を引き結んでいた。

 でも、何で紗里がいるんだ……?

 既に準備予知を遂行していて、その直後、だったとか? 

 うーん……、分からない。

 現実逃避がしたくて色々と考えてしまうが、今もなお男と刑事のやり取りは続いている。

 外に立っていた警備の人たちも中に入るよう指示されていた。

「キミ! 落ち着いて! いったん落ち着いて話をしよう?」

「うう、うるせぇッ!!」

「キミの行為は未遂に終わったんだから、それ以上のことをすると罪が重くなる。先ずはその男の子を解放してくれないか?」

 両手を上に挙げた刑事が丸腰であることを見せて、男を宥めようとしている。が、男は興奮して騒ぎ立てた。

「こいつを放したらさっさと捕まえるつもりだろうがっ! そうはいかねぇぞッ!」

 男は僕を引きずるような形で「おら、とっとと歩け!」と脅してくる。仕方なく後ろ歩きで従った。じりじりと正面玄関に近付いているのが分かる。

 紗里が泣きそうな顔で目を何度もパチパチさせていた。右目で何かを視ようと必死なのが伝わった。

「みえない。なにも視えないよ……っ」

 僕が今この危機から脱する方法が視えないと嘆いているようだが、視えないのならそれは危機ではないのかもしれない。

 そう思うのだが、彼女は僕がこの状況から助かる見込みを読めず、焦りと不安に駆られているようだった。