回線を模索している間、無音に満たされる。三秒ほど待ち、プルルと呼び出し音が鳴った。鳴ったのだが。

 すぐさま、ブツ、と音がしてスマホの画面から光が消える。電話をかける前に見た充電タンクは残り1パーセントだった。

 うわ。やっぱり切れた。ナビで電池を使いすぎたな、これは……。

 連絡を取る手段が断たれたので、仕方なく当初の予定通りに担当刑事を呼び出そうと思った。

「あの、すみません」

 受付のおじさんに声をかけ、ゆうべ紗里を連れて行った刑事の特徴を事細かく伝えた。おじさんは顔をしかめ、それが誰であるのかを考え込んでいる。

「っあ、おい! こら、待てッ!!」

 ふいに背後で怒声が響いた。

 反射的に振り返ると、今しがた入って来た正面玄関から、誰かが駆け寄ってきた。怖そうな中年の男が僕めがけて真っ直ぐに走って来る。

 っえ、え、なになに?? なにごと!?

 男は必死の形相で僕の背後に回り込み、すかさずヘッドロックを決めてきた。

「……っう、」

 左腕を僕の首へと回し、「大人しくしろ!」と低い声で凄まれる。見ると反対の手にはナイフを握っていた。

 ……っひぃぃ!!