グレーな彼女と僕のブルー

「洗濯物を取り込んでいるときにね。何かが燃えるような、焦げ臭い匂いがして外に出たの。煙の元を探したら、キミの家の玄関先で傘と新聞紙が燃やされてたわ」

 傘と、新聞紙……。

 多分、傘は外に置いてあったものだ。

 傘の素材から考えるとナイロンとかそういう類いだろうから、燃えたら異臭がするだろう。一緒に新聞紙を燃やしたのは傘を燃やすための補助的なものだ。

「私それ見て焦っちゃって。お隣さんだから塀があるんだけど。脚立を持ってきて乗って、バケツの水を上からかけたの」

「それ以上燃えないように、ですか?」

「ええ。でも、そのまま家にいるのが怖くなって……さっき店舗で話してた同僚の家に行ったの」

「矢吹さん、ですか」

「そう。仲が良いから」

 そこで一度言葉を切ると、蓮田さんは沈鬱な表情で俯いた。

 僕は昨日ノートにまとめたことを思い出していた。やっぱり、準備予知を前提とした僕の考えは正しかったんだ、と確信を得ていた。

 紗里は僕の家の門扉を開けて入り、そこで傘と新聞紙を燃やした。蓮田さんが二階のベランダに上がるタイミングで臭いに気付くように。

 けれど、そこまで思ってから疑問がわいた。

 蓮田さんはわざわざボヤを消しに降りたのに、どうして外出したんだろう?