部屋でひとり、折りたたみテーブルに向かって胡座(あぐら)をかきながら、状況を整理しようと考えていた。

 目の前にはまだ何も書いていないノートが置いてあり、紙面の罫線(けいせん)が早くペンを突き立てろと急かしてくる。

 さっきから性別男性のノートを穴が空きそうなほど見つめ、僕はシャーペンを握りしめていた。

 あのあと、紗里はろくに説明もせずに僕に背を向けた。

「会いに来てくれてありがとう」

 背中でそう言って、刑事の車に乗り込んだ。

「っあの、あいつは何もやってません!」

 幾らか傘を持ち上げてそばに佇む男性の刑事に詰め寄った。

「それを今から警察署で聴くんだよ」

 彼は大人特有の落ち着き払った笑みで言い、僕をジッと見た。

「キミは? あの子の彼氏かなにか?」

「……あ、いえ」

 彼氏、というワードに頬が熱くなるのを感じる。「従兄弟です」と正直に告げた。

 そう、と短く返事をして、そのまますれ違うような気がしたので「あの」と再度声を上げる。

「れ、令状はあるんですか??」

 普段、紗里と大和がハマって観ていたドラマをふいに思い出し、そう尋ねていた。刑事は目を丸くしている。