引っ越したあとの新生活を迎えるために、少しだけ家具を買い足す必要があった。

 この際だからと言って、母は小学生時代から使っている勉強机を買い替えてもいいと言ってくれた。

 翌日の日曜日、僕は母とともに電車に乗り、インテリアショップに出かけた。家具やインテリア用品を数多く取り扱っている大手企業の大型店舗だ。

 どういうわけか紗里も付いて来た。

 弟の大和は、ゆうべ帰宅したばかりの父親と遊びに出かけているのに、何でわざわざ《《こっち》》に来るんだろうと不思議に思った。

 思ったけれど、内心ではまんざらでもなかった。いやむしろ嬉しかった。

 一緒にいる時間が多すぎるこの一か月のせいかもしれない。僕は紗里ともっと一緒にいたかった。

「恭ちゃんのデスク、あたしが選んであげる」

「いいけど。機能性を重視するからな」

 オッケー、と言って走り出す紗里の背中を見て子供か、とツッコミを入れる。

「じゃあ母さんは二階でカーテンとレンジボードを見繕って来るから、決まったらまた電話するわね?」

「分かった」

 エスカレーターに乗って昇っていく母を見送り、紗里が走って行った方向に足を向けた。