グレーな彼女と僕のブルー

 一番でゴールしたくせに全く疲れを感じさせない先輩が、僕を上から覗き込んだ。

「俺に並ぼうなんざ、百年早えーんだよ」

 言いながら先輩が、ふふんと得意げに笑う。僕と誠のそばに腰を下ろした。

「……そーですね」

 くそ、負けたのが本気で悔しい。腹が立つ。

「だいいち5000と3000じゃペース配分が違いすぎるだろ。最終周でラストスパートかけないでどうすんだ」

 ……ごもっともで。

 普段からチンタラ走ってるからだ、と図星まで突かれた。

 僕と先輩の様子を見て、誠が唖然とした様子で口を開けた。

「え、なんだよ、恭介。まさか先輩に張り合ってたのか?」

「……そーだよ、悪いかよ」

 決まりが悪く、口を尖らせそっぽを向いた。

「ったく。無理に決まってんのに生意気な後輩だ」

「……すみません」

 ちくしょう。負けたのには変わりないが、なんかやっぱり腹が立つぞ。

 しかめっ面でふてくされる僕を見て「ははは」と急に先輩が笑い出した。

 声を上げて笑ったところを見るのは初めてなので、ギョッとなる。

 なんだ……?

 一瞬、馬鹿にしてんのか、と怪訝に思うのだが。その笑いは嫌なそれではなかった。