グレーな彼女と僕のブルー

 ぜいぜいと上がる自らの息がうるさい。首から上は煮えたぎった鍋のように熱く、火照(ほて)っている。

 目がぐるぐる回る、明らかに酸素が足りない。

 心臓の音がドンドン鳴り響き、まるで太鼓のようだ。

 このままトラックに倒れてしまいたい衝動に駆られるのを、何とか踏みとどまり、高く澄み渡る青空を仰いだ。

 古賀先輩との距離はやはり縮まらない。

 くそ……!

 頑張れ、俺!

 涼しい顔して勝負を受けたくせに、このままじゃあ腰抜けも同然だ……!

 自らを鼓舞し、何が何でも並んでやると奥歯を噛み締めた。両手に汗を握る。古賀先輩との距離を僅かに詰めて、がむしゃらに足と腕を動かした。

 残りあと1周というところで、古賀先輩がグンとスピードを上げた。

 っえ!

 驚異的なスピードで残りのトラックを全速力で駆け抜けていく。

 えっ、えっ、

 嘘だろ……? はぇえ……!?

 それはさながら短距離選手のスピードだった。

 どこにそんなスタミナが残っていたんだと失望にも似た気持ちで、何とか追いかけるが。既に抜かした三人の部員までもが、次々と僕を追い抜いていく。