グレーな彼女と僕のブルー

 前半は自分のペースを守り、ただ前に前にと足を進めて行こうと思うのだが。走り出しから背後を走っていた古賀先輩が、半周目から僕の前に出てきて僅かにスピードアップをした。

 それに触発されて僕の足取りも少しだけ速くなる。

 3周目に差し掛かり、先輩が余裕綽々(よゆうしゃくしゃく)の表情で振り返った。先輩との間には、他の部員三名を挟んで大きく距離が開いていた。腕を振ってまたペースアップする。

 先輩との距離がなかなか縮まらずに、それどころかまた少しずつ引き離されていく。その間に二人を抜いた。

 5周目に差し掛かるころ、大きく息が乱れているのに気が付き、左手で横っ腹を押さえた。

 ……しまったっ、前半飛ばし過ぎた。

 ペース配分に無理があった。

 僕の前を走るのは古賀先輩ただ一人だが、まだあと2周半、つまり1000メートルも残っている。

 このペースでやれるか……?

 今さらペースダウンなどできず、必死に両足を前へ前へと運んで古賀先輩の背中を追いかける。

 前半心がけていた呼吸が乱れ、大きく口で息を吸っていた。