グレーな彼女と僕のブルー

「だって引っ越し先決まったんだろ? 送別会も兼ねて祝ってくれそうだなと思って」

 まったく羨ましい奴だぜ、と言って誠が肩をすくめる。その様子を真顔で見つめ、僕は目を細めた。

「あのさ。前から思ってたんだけど。いきなり紗里と仲良くなってるよな?」

「っえ、いやぁ。そんなことは……」

 誠の声が上擦り、彼は飛び跳ねるように肩を揺らした。図星か。

「仲良いんなら、わざわざ諦めなくてもいいと、思うけど……」

 語尾は独りごとのように、尻すぼみになった。

 胸の奥が少しだけチクンとなって、心臓に手を当てる。有酸素運動でドンドンと激しく脈を打っているだけで特に変わった様子はない。

「実はさ。玉砕してるんだ……、俺」

「………え?」

 ポソっと落ちた誠のつぶやきに、反応が遅れる。どういうことだよ、とこちらから確かめる前に誠が言った。

「試合で怪我したときにさ。赤城さんから大丈夫? って……ラインが届いて。その会話の流れで、告白した」

「………凄いじゃん」

「うん、でも。好きな人がいるからって断られた」

 三日休んだのそのせい、と言って、誠は力なく笑った。

「そうだったんだ」