グレーな彼女と僕のブルー

 ありがとう、と続けると、ピースサインで手を振られて、扉が閉まる。

 従姉弟の父親が帰って来ることと僕の誕生日、そして僕たちの引っ越し先が決まったこと。それらを頭に思い浮かべると、確かに紗代子叔母さんなら腕を振るうだろうと予想できた。

 今日はいい誕生日になりそうだ。

 自然と口角が上がり、笑みを浮かべていた。


 *

「そういえば今日だったよな、恭介の誕生日。おめでとう……?」

「ありがとう。……て言うか、何で語尾が疑問系なんだよ?」

「いやいや。毎年今日と明日のどっちだったか迷うんだよ」

 十月末で覚えてるから、と続け、誠は茶目っ気いっぱいに、テヘと首を傾げた。

 なんとなく笑ってしまう。

 久しぶりの部活に出て、淡々とメニューをこなしていた。外周の走り込みもあと2周で終わる。

「つーか、さ?」と何か思い出すような素振りで誠が僕を見た。

「赤城さんに誕生日祝ってもらうのか?」

「……は? なんだよ、急に」

 今朝のことを思い出し、若干慌てる。紗里のあの様子を思うと、またノートに色々書いて企画しているような気がした。

 走っているせいだろうが、頬が幾らか熱くなる。