グレーな彼女と僕のブルー

 紗里の開口一番にポカンと口を開けた。数回まばたきをして、率直に思ったことを尋ねた。

「なんで知ってんの?」

「ふふん、なんででしょう?」

「それもういいって」

 呆れて嘆息すると、紗里はなおも得意げに笑う。

「恭ちゃんのだいたいのプロフは把握してるよ。10月30日生まれで身長が168センチでA型で我慢強くて、小学六年生の頃のマラソンで10位代だったことから中学、高校と陸上部長距離で、料理が好きってことぐらいは常識レベルだし」

「……。こわ、」

「怖いってなによー、失礼な!」

 紗里は頬を膨らませ、プイッと顔を背けた。まるで子供みたいな怒り方をするやつだ。そんな彼女を見て、フッと頬が緩んだ。

「とにかく、ありがとう」

 年に一度のおめでとうなんて、母や誠ぐらいにしか言われないし、なんなら忘れられることもあったので、正直なところ嬉しかった。

 笑顔の僕を見て、紗里もえへへ、とつられて笑う。

「それで今日なんだけどね」と紗里が意気揚々と別の用件を話し始めた。

「一ヵ月ぶりにパパが帰って来るんだぁ」

「っえ、そうなんだ?」

「うん。だから、今夜は期待してていいよ〜? ママとご馳走作るから」

「……あ、うん」