グレーな彼女と僕のブルー

 僕の捻挫も、誠の切創(せっそう)も同じ期間で回復し、週末の土曜日からまた部活に参加しようと決めた。

 そんな十月末のある日の晩。仕事を終えて帰宅した母から、「引っ越し先が見つかったわよ」との報告を受けた。

 え、と呟き、少なからず衝撃を受けていた。僕の反応は同じリビングで話を聞いていた紗里や大和と似たり寄ったりだった。

「駅寄りの方で場所はここから近いし、学校にも通いやすいし綺麗なところよ」

「……あ、うん。そうなんだ」

 ずっと待ち望んでいたことをようやく告げられたのに、なぜか心がざわついた。素直に喜ぶことができない自分に戸惑ってしまう。

 変だ。

「集合住宅だから、多少音には気をつけないといけないんだけどね。南向きの角部屋の6階で、間取りは2LDK。二人で住む分には充分すぎるほど広いから」

「……そうなんだ」

「実際に移るのは十一月に入ってすぐの祝日になるけど、いいわよね?」

「あ、うん。勿論。その日は部活も休むから」

 大丈夫、と続け、ようやく笑うことができた。

「えぇ〜っ、恭ちゃんもう出て行くのかぁ……」

 大和が残念そうに眉を下げ、ふて腐れた
様子で俯いた。