「その手紙を読まなくても死んだのか」


「いいえ。手紙を読んだから死にました。」


「その手紙は、ピアニスト以外が読んでも死ぬのか。」


「いい質問ですね。これはいいえ、でしょう。少なくとも私たちは死にません」



一問一答が続く。
彼がヒント、と言った。



「薄暗い部屋で、どうやって読んだのでしょう。」


「......その手紙には、文字が書いてあったのか」


「いい質問ですね。いいえ。文字は書いてありませんでした」



そうしてまた彼は頭を悩ます。
暇には最適だった。



「その手紙は、俺らでも読めたのか」


「いいえ。私とあなたでは、読むどころか理解すら出来ないでしょう」



彼が眉間に皺を寄せる。
答えは言うな、俺がだす。そう彼は静かに言った。



「手紙は開くことで死ぬのか。それとも、読むまでは死なないのか。」


「いい質問ですね。読むまでは死なないでしょう。」


「...そのピアニストは、目が見えるのか?」


「とてもいい質問です。いいえ。目は見えません」



わかった、彼はそう言って答えを述べた。