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今年はどうしても赤点を取りたくない理由があった。


平均点以下を取ってしまうと夏休みの半分が追試で消えてしまうことだけは避けたい。


「この数字をこっちの式に当てはめて考えるんだ」


舞と青っちしかいない病室内で熱心に勉強をするペンの音が聞こえてくる。


病室は冷房が効いているし、静かだし、勉強するのに適した場所であることを舞は初めて知った。


「できた!」


「うん。これで全問正解。数学はもう大丈夫そうだな」


青っちは言っていた通り勉強ができるみたいで、教える側としても申し分ない講師だった。


ただ、長時間の勉強はできなかった。


1日1科目、30分だけ勉強を教えてもらっている。


後は青っちのリハビリを手伝ったり、体調が悪くなればずっと横になっていたりする。


青っちの無理の内範囲でやっていることだった。


「どう? 赤点は免れそう?」


ベッドに横になりながら青っちが聞いてくる。


舞は親指を立っててグッドサインを出してみせた。


病室で勉強したことは、家に戻ってから反復する。