「俺は大丈夫。だから帰ってやれよ」

「…本当?」

「ああ。心配するなって」

そう言って優しく笑う。
でも心配するなって方が難しい。

「……ねえ、ちょっとここ、どこだかわかってる? お兄ちゃん、何も知らない人が見たら、彼女といちゃついてるようにしか見えないんだけど。勤務中に」

あ、そうだった。
真はもう黒エプロンをしている。

「環、そういうお前は、カップルの邪魔をしに来た無粋な女にしか見えないぞ」

「はぁ? 何を開き直って!」

「泉がこっちに泊まるって言うから、説教してたんだよ。アイツ、拗ねるだろ?」

「…ああ。そういう事。
タレ目のワンちゃんね。
……まあ、今日ははなれに泊まってあげたら?
拗ねると厄介だし。
泣いちゃうかも。
兄に一票だわー」

「もうっ……わかったわよ。
真、何かあったらいつでも電話ちょうだい。
……いいわね?」

「ああ……サンキュ」