「加藤さんって人。京の営業部の先輩だよ。
幕張入りした初日にね、準備が終わったあと、京と営業部の人に誘ってもらってご飯を食べに行ったの」

営業部の人?
食べに行った??
聞いてないぞ。
京の出張の同行に女性社員を付けるわけないから、男のはずだ。

「で、これを渡されたと」

「これはつがいの鶴を解体した後、展示していた大量のバームクーヘンを他社のブースに『お疲れ様でした』って配ったものよ」

「それだけか?
他に何か渡されたんじゃ…」

「うん。他にもね、加藤さん、毎日桐野屋のブースに差し入れをくださって。
うちのスタッフ皆んなHASEGAWAのお菓子大好きだし、有難く頂戴してたの。
なんかね、加藤さん和小物に興味があるんですって! 休憩時間は必ず桐野屋に来られてたのよ。
色々教えて欲しいって言うから、私が知ってる知識で人気の和柄のお話とか、モザイクの亀に使った子風呂敷のお話とかしてあげてたの。
珍しいよね〜。
若い男性で和小物に興味があるなんて。
びっくりしちゃった! 」