「桜川家、朝倉家の結婚式にご参列の皆様はチャペルにお入りください」


チャペル横のゲストハウスにアナウンスがかかった。

今日は早朝から環と共に着付け室に向かい、振袖に着替えていた。

私は紅地に御所車の錦糸刺繍が施された振袖に、龍村の金色の鎧兜帯を締めている。

環は縹色地に鞠とくみひもの可愛らしい錦糸銀糸刺繍が施された振袖に、同じく龍村の銀色の鎧兜の帯を締めている。

どちらも桐野屋呉服店で誂えたもの。

成人式以来の着付けだ。
朝のシャキッとしない体には負担が大きい。

でも、髪をセットし、着付けが進んでいくと、徐々に気持ちが引き締まる。
昨夜涙を流した目は、幸いなことに浮腫んでいなかった。



「泉!!」

「京!?
やっと来た。間に合わないかと思ったわよ〜!」

息を切らせて大きな箱を抱えながら、京がやっとゲストハウスに到着した。

「ごめんっ! ちょっと寝過ごして……。
電車めっちゃ混んでるし……ハァハァ
ま、間に合ったぁ〜〜」

朝から汗だくだ。

「ちょっと、ネクタイもしてないじゃない」

見ると礼服のポケットからシャンパンベージュのネクタイが少し出ている。
真がそのネクタイを取り上げ、京に巻き付ける。