桐野屋の工房を訪れ、青磁さんから端切れを渡された時の感動は今でも忘れない。こんな大量に端切れが残されているとは思わなかったんだ。
しかも、どれも素晴らしい色柄だった。

「実際のところ、置いてはいるけど使いようがないんだよ。京くんが欲しいだけ持っていっていいから」

と言われた時は飛び上がらんばかりに喜んだ。

実は青磁さんも聖堂館学園出身で、訪問前に電話した際、先輩と思ってくれたらいい、と言ってくれた。

それから何度もやり取りしているうちにすっかり打ち解け、兄弟のように過ごさせてもらっている。

「京くん! 差し入れ持ってきたよ! 」

「青磁さん……ありがとうございます!
山根さん、加藤さん、休憩にしましょうか」

青磁さんが差し入れてくれたアイスティーを2人に配る。

国際展示場の中は空調完備されているとはいえ、真夏の今、冷たい飲み物の差し入れは有難い。

「順調に進んでいるみたいだね」

「今のところは……。
全て巻き終わったら段組をして……後は微調整ですね」

「京くんのアイデアには本当に驚いたよ。
でもこれだけの色に溢れていて、本当に叶うんだろうか……」

「可能なはずです」

「俺達も信じてますから。な、加藤」

「まぁ、完成予想図を見せられた時はド肝抜かれましたけどね。京ならやってくれるでしょう」