模型があるのは2階の展示室だ。
普段からあまり人のいない展示室だが、定時を2時間近く過ぎた今、2階には人の気配が全くない。

考えていた模型は、やはり少し太めだ。

購入したばかりの布を、泉が次々に広げていく。

「これは綿のプリント柄だからね。
実際には京の言うように、正絹を巻けたら全然違ったものになると思う」

俺がバームクーヘンの3分の1程を出して、残りの全てを布で包んでみた。

「わー、なんか、お人形みたい。
二体あったら女雛と男雛みたいじゃない? 」

「いいな。そのイメージも! 」

「……京、これイケるかも。
紅白だけじゃなく、新郎新婦の好みに合わせて色とりどりに御化粧したバームクーヘンを並べるの。箱は桐がいいかしら。すっごく映えると思う。遠くから見ても目を引くわ」

「ああ…。映えるな、これは。
ありがとう、泉。
泉が今日誘い出してくれなかったら考えつかなかった。泉のおかげだ!」

「私は状況整理のために質問しただけよ。
いつも常務がされるようにね。
考えたのは京じゃない」

さすが……雅伯母さんの教育の賜物だな。