「あら! 京くんすごい!
小麦粘土でこれだけリアルなバウムクーヘンを作るなんて。本当に器用ね〜」

母も京の作品に驚いていた。

「京は家でもいつも粘土遊びなのよ。
でも本当、これ上手く作ったわねぇ。
お父さんが見たら喜びそう」

「だめ。これはプレゼント。
しんといずみにあげるの!」

「ああ、今日、園のお誕生日会だったからね? 
双子たち、今月はお誕生日月だもんね。
京、よく考えたね〜。えらいえらい!」

美央おば様の言葉で、その作品が京から私達への誕生日プレゼントだということがわかった。

「けい、ありがとう〜」

私は可愛いものが大好きだったから嬉しかった。それに、みんな欲しがっていたのに、それが私達のためのものだったのだ。幼いなりに優越感を感じていた。

「……ありがと」

外では口数の少ない真が、一つ一つ出来栄えをチェックしながら、一言だけお礼を言った。

真は口数が少ないけど、私にはわかる。あれはかなり喜んでいる。

「うん! またつくるからな!」

作ってくれた京の方がニコニコしている。

せっかくの作品なので、美央おば様は、せめて写真だけは撮って、おじ様に見せることにしたみたいだ。

なんだか私達が京の特別だってわかって、とてもとても嬉しかったから、この日の出来事はずっと私の心に残った。