「大丈夫。泉ちゃんなら出来るわ。
わからなければ、葬儀会社の受付で聞きなさい。
初めてで不慣れなんですって言えば、誰でも親切に教えてくれるわよ」

「……はい」

「京も大丈夫よ。
あの子は意外と場馴れしているから。
マナーも小さな頃から叩き込んであるし」

そうだ。1人じゃない。
京の同行なんだから、大丈夫!

「はい。大丈夫です。2人でなんとかします。
講演会は同行出来なくてすみません。
スライドの準備、大丈夫でしょうか?」

会場での準備も秘書の仕事だ。
でも、常務は茶目っ気たっぷりにこう言った。

「フフフ、大丈夫よ。
いざとなったら会長を秘書にしちゃうから」

「プッ……そうでした。
最強の秘書さんがいらっしゃいました」

「ええ。問題ないわ。
自慢の美人秘書を連れて行けないのは残念だけどね。聖が残念がりそう」

「あ、そうだ。
伯父様にこれを渡してください」

お誕生日プレゼントというほどのものではないけれど、伯父が好きな物を購入しておいた。
今日お会いすると思っていたから。

「あら、何かしら?
……あ、これインスタントカメラのフィルム?」

「はい。全然大したものじゃないんですけどね。限定柄のが出ていたから、伯父様の事が浮かんだんです」

伯父は孫が生まれてから、なぜか小さなインスタントカメラにハマりだした。いつも持ち歩いて、写真をその場で皆んなにあげるのだ。

小さな子にとってはシールを貰うような感覚で、いつも喜んで受け取っもらっているらしい。

この限定柄フレームは、あの夢の国のネズミに次ぐ勢いの、日本産黄色い電気ネズミだ。

「まあ! そんな柄があるの?
陽平が喜ぶわ〜」

そうそう、お孫さんの陽平くんが好きなんだよね。

「今日、早速使いそうね」

「はい、ぜひ!
あと、おめでとうございますってお伝えください」