木がふんだんに使われている店内は特徴的で、かの建築家が設計したのだと私でもわかる。
木の温もりと優しい陰影。斬新なのにどこかホッとする造りだ。
公的な図書館や博物館の雰囲気に似たものがある。

この雰囲気、好きだな……
明るい時なら、また違った雰囲気なんだろう。
夜のカフェも素晴らしいけど。

ここで真が働いてるんだ。
良いところだな。
ちょっと羨ましい。

「ナコちゃん、奥が注文カウンターなんだ」

「……あ、うん」

奥へ行くと、真が忙しそうに動いているのが見えた。
身長が高くて猫背気味。白シャツに黒のエプロンをしている。
昨日、私が洗濯しておいたエプロンだ。

こちらには全く気付いていない。
気づかれないままで、席まで行けるかもしれないな。

「ここ、ラテアートも評判なんだよ。
店長さんが上手でさ。
……あれ、でも今日は店長さんいないか」

「いらっしゃいませ、ご注文は?」

学生アルバイトかな?
若い男性スタッフが注文を聞いてくれた。

「ナコちゃん、どうする?
スイーツもあるよ」

湯葉懐石がヘルシーだったから、スイーツと朝倉No.1でもいいかな。
わー。アップルパイ美味しそう……。