着物は好きだ。
小さい頃から慣れ親しんでいるし、自然と目利きも身についている。

それに何より、可愛い甥っ子のためだ。
青藍の健康には変えられない。

青藍がしっかりするまで。
それが兄との約束。
ほんの少し、夢が遠のいただけ。
ううん、桐野屋で働きながらでも、貯金は出来るんだから、有り難く思わないとね。

そう思って、この1年頑張ってきた。


◇◇


「おはようございます!」

「ナコちゃんおはよう。
今日も元気いっぱいだね」

「はい! 今日は沢山フェアに来られる予定なんですよね。
達矢さんよろしくお願いします!
私、準備に取り掛かりますね」

「ああ、よろしく。
今日、もう1人は?」

「今日は東雲です。朋香さんの方。
9時半入りでお願いしているので、もう少ししたら来るかと」

「朋香さんね。了解!」