撫子の実家は呉服屋を営んでいる。
あの着物は、親が撫子のために用意した撫子色の着物だったのだろう。

「これ、まんまだな……」

菓子を買う予定だったが、こんな撫子のためにあるようなマグカップが見つかったんだ。
これしかないと思い、サラリーマンたちに続き、レジの列に並ぶことにした。

ひょっとしたら、またセンスが悪いと言われるかもしれない。

でもまあいい。
気に入らなければ捨ててくれても。
菓子だって形の残るものではないんだから。

ラッピングに思ったより時間がかかり、時間ギリギリに待ち合わせ場所に着いた。

「悪い! 待たせたな」

「私も今着いたところだよ。
お腹減った〜! どこ行く?」

時刻は19時。たしかに腹が減った。

撫子のリクエストで、高校の時からよく行っていた洋食屋へ久しぶりに行くことにした。