「ニャーン」

アールが手に擦り寄って来て、ハッと我に返る。

「……どうしたの?」

「ニャーン……」

頭を撫でてやると、ゴロゴロと喉を鳴らしながら目を細めた。

慰めてくれてるのかもしれない。

「あ、そうだ。アールにお土産があったんだ!」

不意に思い出し、沈んだ気持ちを切り替えるように無理やり笑顔を作る。鞄をゴソゴソと漁り、「あ、あったあった」と呟いて紙袋を取り出した。

「お土産、ですか?」

「はい!こないだ友達と猫カフェに行ったら、そこの猫ちゃんが首に可愛いリボンを付けていたんです。店員さんに聞いたら、そこのオリジナルのリボンで……」

紙袋から中身を取り出し、アールに見せた。

「ジャーン!どお?アール。可愛いでしょ?」

振って見せると、チリン――と赤いリボンの中央に付いている鈴が鳴った。

それを見たアールは目をらんらんと輝かせ、そのリボンにじゃれようとする。

「こらこら。おもちゃじゃないわよ。ここに……ホラ、可愛い♡」

カチッ……と首にそのリボンを着ける。

アールには少し違和感があるのか、最初は首を振ったりしていたけどそれも数分で、その内何事もなかったかの様に毛繕いをし始めた。

「うん、大丈夫そうだね!アール、よく似合ってるよ!」

「ありがとうございます」

三毛さんが頭を下げる。

「あ、いえいえ!私こそ勝手に……ご迷惑じゃありませんか?」

何も考えずにアールに似合うなって買って来ちゃったけど、よくよく考えたら出過ぎた真似だったかも……。

「とんでもない。アールも嬉しそうですよ」

三毛さんがアールを指差す。

アールは自分の姿を窓ガラスに映し、尻尾をパタパタと振っている。

「……それなら良かった」

私はアール本人が気にっているなら、とホッと胸を撫で下ろした。

太陽の光が、お店の中を照らす。

写真立てがキラキラ光って、目の端に映る。

痛む心に気付かない振りをして、残りのミルクティーを飲み干した。