「……って、なにコレ!?」

読んでいた本を閉じて、親友の実弥(みや)が顔を真っ赤にしながらあたしに詰め寄る。

「まあまあ、落ち着いて」

「落ち着いてらんないわよっ!なんなの、コレは!?」

今読んでいた本を指差し、怒鳴った。

「何って……実弥と三ヶ谷(みけたに)さんが恋人になるまでを書いた小説?」

あたしは視線を逸らしながら実弥の質問に答えた。

「そーゆう事を聞いてるんじゃなくて!なんでそれを断りもなく小説になんかしてんのって聞いてんの!」

「うっ……それは……」

あたしは言葉に詰まった。


説明しよう!
あたし、佐山楓コト『佐藤 楓』は、恋愛小説家である。
この『猫と笑顔とミルクティー~あの雨の日に~』は、幼馴染みである『藤森(ふじもり) 実弥(みや)』が、喫茶店のマスター『三ヶ谷(みけたに) 伸一(しんいち)』さんと両想いになるまでを書いた、ノンフィクション小説である!


「だってぇ……話聞いてたら、小説にしたかったんだもん」

「だもん、じゃないわよ!怪しいと思ったのよね!逐一(ちくいち)話を聞かせろってうるさかったし、私の話聞きながらやたらパソコンいじってたし!」

実弥が、まったくっ!と腕を組んで、プンスカ怒っている。

……こりゃあ許して貰えないかも。

「勝手に小説にした事は謝る。ごめん。でも、良いお話だな、皆に読んで貰いたいな、って思っちゃって……。ホントごめん……」

スン……と鼻をすすりなから謝った。

すると、はぁ……と溜め息を()いた実弥が、

「……もう良いわよ。まあ、読んで面白かったし、嘘も書いてないし、良い話に(まと)まってるから、許す」

と言ってくれた。

「ありがとーっ!実弥大好きっ!」

あたしはしおらしい態度も忘れて、実弥に抱き付く。

「こらっ!……ったく」

スリスリと頬擦りするあたしに、ふふ、と笑った。

本人は気付いていないかもしれないけど、実弥はあたしに甘いんだ。