知りたい気持ちを心の片隅にしまい込んで
普段と同じように出社し
変わらず自分の業務を遂行。


いつもと違うといえば
燈冴くんが不在の中
《《あの人》》が会社にやってきたって事くらいーーー



「漣さま、来客がお見えのようです」

「え…?」

お昼休みの少し前
受付から内線が入り応接室へ来るようにと言われ
仕事を途中に席を立った。

廊下を歩きながらどうにも考えてみたけれど…
来客に身に覚えがない。

今日は誰ともアポイントを取ってないし
それ以外で約束もしていない、はず。
忘れているだけか、それとも急用か
思い当たる人物に心当たりのないまま
応接室の扉をノックしたーー


「すみません、お待たせをーーー」

「漣さん!」

「え、元宮…さん?」

開けるとほぼ同時に
待っていましたと言わんばかりの勢いで
ソファから立ち上がった彼女にちょっと驚いた。

『どうしてここへ?』と訊ねながら対面する形でソファに移動すると、彼女の興奮も少し落ち着を取り戻して座り直した。

「漣さんがこちらにいる事をお店の方から聞いたんです」

「お店…」

もしかして支店から聞いたのだろうかと
わたしの中で推測していると
突然「あの!!すみませんでしたッ!」って
背筋を伸ばし深々と頭を下げて謝罪する彼女に、ビクッと肩を震わすほどまた驚かされた。