熱と倦怠感に見舞われた燈冴くんに肩を貸し
足元がおぼつかない体を支えながら
ゆっくりとベッドに移動させる事に
なんとか成功。したものの…

「どうしよう…」

結局、着替えは中途半端になってしまったし
こんな状態のままだと絶対治らないと思う。

額を冷やすものとか温かい毛布とか、何か…

「ホテルの人を呼ぶから
 もう少し待ってて?」

客室内に備え付けられている電話から
フロントに掛けるためにベッドから移動しようとすると。

「待って、ください…」

か細く消え入りそうな燈冴くんの声と
行く手を止めようと掴まれた手首。

「俺の事は大丈夫…ですから…」

「でも…」

苦しそうな表情で言われても
全然大丈夫そうには見えない。

それなのにこのまま放置だなんて…

「平気です…
 だからもう少しだけ、このままで…」

ドクン…と鼓動が胸を打つ。

どうしてこんな時に
そんな風に甘く囁くの…?

まださっきのキスが頭から離れないのに
そんな言葉…弱いよ。

「お願い…します…」

ハァ…と熱い吐息と
先程よりも辛そうに顔をしかめる姿に
雑念以上に不安に煽られてしまったわたしは。

「わかった…
 わかったから、もう喋らないで…」

電話をするのを躊躇し
掴むその手を握り返してしまった。