無彩色なキミに恋をして。


場所はわたしの1階下。
時間は21時を過ぎていて
早ければもしかしたらもう寝ているかもと思いつつドアをノック。

少しの間
沈黙が続いた――

「やっぱ…寝ちゃったか」

怪我しているし
疲れて眠ってしまったんだと思い
わたしは諦めて引き返そうとドアの前から離れた。


すると・・・


ガチャ…―――


扉の開く音のあと
『緋奈星さま?』と
わたしを呼ぶ声が聞こえて
すぐに彼の方へと引き戻す。

「ご、ごめん!こんな時間にッ」

「いえ、お気になさらず。
 それより…どうかなさいましたか?」

「えっと…その…
 用事、じゃないんだけど…」

首を傾げる彼を目の前に
燈冴くんが心配で様子を見に来ました。って
畏まって言葉が出ず
視線を逸らして何と言おうか考えてしまう。

だって
様子を見に来たところで何か出来るはずないじゃん。
『そうですか』で終わるだけ。

「ゆ、夕食は済んだかなぁ?って思って…あはは」

自分でも不自然すぎる交わしに情けないなって思うけど。
聞いてよかったと、すぐにわかった。

「夕食…ですか。
 いえ、まだ…。と言いますか
 あまり食欲がないので。」

「え…」

珍しく彼の言葉が弱く
苦笑を見せるその表情と
わたしは《《ある事に》》違和感を感じた。

「燈冴くん…まだ着替えてない…?」

ホテルに到着したときの
怪我したときのシャツのままだから。