無彩色なキミに恋をして。


「…あの時。
 緋奈星さまも同じ事をしようとしたのでは?」

「え…」

彼の言葉に
泣いていた顔を上げて目を合わせた。

確かにあの時
助けに行かなきゃって無意識に体が動いていた…けど…
腕を掴まれて引き戻されなかったら、わたし…

「私が動いたのは
 緋奈星さまに怪我を負わせたくなかったから。
 だから間に合って良かった。
 私には、それが何より1番なので」

その言葉にまた涙が溢れた。


やっぱりわたしのせいだ…

ごめん…燈冴くん


「ごめんなさい…」


泣き続けるわたしに
彼はそっと『ホテルに戻りましょうか』と
やっぱり何事もなく終わらせてくれる。

燈冴くんは
こういう時まで紳士な人ーーーー



病院を出てホテルに到着する頃には
涙も落ち着いてくれて
燈冴くんと共にチェックイン。

乗り込んだエレベーターがしばらく上昇を続けるから、なんとなく嫌な予感はしていたけれど…



「凄い部屋…
 本当にここ?」

案内された部屋のドアを開けた瞬間
目に映ったガラス張りの巨大窓に
とんでもない部屋だってことを悟った。

「はい、こちらです」

答えてくれたのは燈冴くん。
すました顔して
わたしの背後からキャリーケースを引きながら
中へと入ってくる。

予約したのもたぶん彼なのだから
全部知っていて驚かないのは当然よね。