動かそうとすると痛みが走るのか
右腕から肩に掛けて気にする素振りが見えたから。
「燈冴くん、もしかして怪我…」
「いえ…大丈夫です」
わたしの問い掛けに笑顔を向けるけれど
その額からは冷や汗が滲んでいる。
そんな顔、見た事がない。
それくらい酷く傷めているんだと思う。
「あ、あの…私…」
「どうしてこのような危ない事をしたんですか。
貴女の行動で緋奈星さままで巻き込むところでしたし、あと一歩遅かったら貴女自身も死んでいたかもしれないんですよ」
起き上がった元宮さんが何かを言おうとすると
すかさず燈冴くんが叱責。
冷酷な表情からは殺気すら感じられ
その迫力と脅しにも似た言葉に
彼女も自分のしてしまった事を反省したのか
俯いて『ごめんなさい』と謝罪した。
野次馬も集まり大事になっているけれど
何事もなかったかのように燈冴くんは立ち上がり
トラックの運転手さんに頭を下げている。
「元宮さんも大丈夫?」
「は、はい…」
わたしは彼女にも怪我がない事を確認すると
その手を取って立ち上がらせた。
…と、ちょうど話を終えた燈冴くんが戻ってきて
わたしと元宮さんの顔をそれぞれ見ながら指示を始めた。



