わたしにとっては兄みたいな存在で
それは父も同じに思っているみたい。

「緋奈星。
 またお前は燈冴くんに起こしてもらったのか。
 21歳にもなっていいかげん1人で起きなさい。
 彼に申し訳ないだろ」

高級ホテルの大広間のようなダイニングルームに
貴族や王族達が晩餐会やらに使うような長テーブルが1つ。
そのド真ん中で、すでに朝食を食べ始めている父は、わたしが来るなりいきなり説教。
まぁこれも毎朝恒例の挨拶みたいなもの。

(わたくし)の事はお気になさらず。
 それよりも。起こすのが遅くなってしまい
 こちらこそすみません」

父に丁寧に深々とお辞儀をする燈冴くんを余所に
わたしは、しれっと自分の席についた。
あー…お腹すいた。なんて思いながら。

秘書であり執事として父は特に燈冴くんを気に入り、絶対的な信頼を寄せている。
だからなのか
彼もまた父の前では見事なくらいの仕事っぷり。

(わたくし)”と”俺”で使い分けているあたり
わたしの前では”素”が出てる節があるんだろうな。

「緋奈星さまの朝食も今ご用意します。
 少しお待ちください」

わたしにも一礼し
足音1つ立てず静かに立ち去っていく姿は
よく出来た執事。

さっきまでベッドに乗っかってた人とは
まるで別人。