けれど…
今日の燈冴くんは、いつもと少し違っていて
余裕のある表情じゃなくて
むしろ、その逆にも見える。

「こんな夜分遅くに好きな人の部屋に入るのはダメですね。
 抑えが利かなくなりそうです…」

そんな事まで言うんだもん…
そんなの…わたしも求めたくなるよ…

「でもここは社長の家ですから。
 さすがにそれ以上は――――」

「今は…いないよ」

「緋奈星さま…?」

「今は誰もいないから…
 だからもう1度…だけ」

自分でも大胆な事を言ってるのはわかってる。
でもそれはこんな状況で、相手が燈冴くんだから…

「いつからそんなに男を誘うのがお上手になったんですか?」

「そんなこと……んッ」

喋ってる最中に唇をキスで塞がれた。
さっきとは違う、少し強引な口づけ。

「もう1度…」

そう言ったのは、今度は燈冴くんの方。

離れては何度もキスをして求めてくれるから
だんだんボーっとしてくる。

「緋奈星さま…」

「ん?」

「今だけ…執事じゃなくて
 ”男”になってもいいですか?」

唇を離した僅かの隙から吐息交じりの彼の声に
『はい…』と一言、囁くような返事をすると
また唇を奪われる。

今度は深く何度も。

頬を触れる燈冴くんのスベスベした手に手を重ねて、与えられる愛を受け入れ
るうちにそのままベッドに押し倒された。