無彩色なキミに恋をして。


「知らなかったの?彼の事は。」

「はい。ご子息がいる事は聞いていましたが
 お顔を拝見した事も直接お会いした事もなかったので、今回が初めてでした。
 まぁ当人から”鮎沢”と聞いたときに
 すぐにピンときましたけど」

ファーストコンタクトで鮎沢さんが自身の紹介をしたとき無反応だったから、全然気付かなかった。
だけどその時にはもうすで知っていたんだ。

「息子を婚約に後継者もなんて
 初めに聞いた時からおかしいとは思っていましたけど、鮎沢社長の根端がまだ見えません」

「それに…鮎沢さん自身も
 何かお父様と確執があるようにも思えます」

わたしの中で
さっきの彼の言葉が少し引っ掛かっていた。
最初に出会ったときも『婚約者らしい』と曖昧で
自分の事のはずなのに、まるで他人事だったから。

「あの男は《《食えない》》ヤツです。
 どうなろうと俺には知った事じゃない」

やっぱり燈冴くんは彼を好きじゃないみたいだから
どう言葉を返していいか苦笑いになってしまう。

「どうなろうが関係ないですが
 緋奈星さまに手を出させる真似だけはさせません」

ふいにそんなことを言われるから
心の準備なんて出来なくて照れてしまう。

嫉妬、してるのかな…
嬉しいけど、本当に燈冴くん
急に独占欲が強くなったかも。