無彩色なキミに恋をして。


忠告とも取れる言い草のあと
今度はわたしの方にも振り返り、笑顔を向けて言う。

「早急に結婚の日取りを決めましょう」

と―――――――

息子本人に対しては何も告げず
目を合わせる事もなく社長室をあとにする鮎沢社長。

こ、怖かった。
強烈すぎる威圧感に何も言えなくなる。
わたしの父も厳しい人だけど
そんなの比にならないくらいのレベルだ。

「親子関係、随分と良好そうですね」

立ちすくむ鮎沢さんを前に
燈冴くんの辛辣な嫌味が飛んでくる。

燈冴くん自身もお父さんのことで色々あるだけに
この言葉の意味を考えると皮肉とも取れる。

「良好…ねぇ。
 あの人にとって、俺はただの捨て駒なのに。」

閉まった扉を見つめたまま
呟くように悪意たっぷりな捨て台詞を吐いたかと思うと仕事を放棄し、ご機嫌ナナメに社長室から出て行ってしまった。
 
あんなこと言われて、よほど頭に来たんだろうな…。

「まったく。
 わざわざ社長室(ここ)に来て言う話じゃないですよ」

明らかに怒った様子の燈冴くんは
食器を片付けながら珍しく感情が口に出ている。

「燈冴くんは鮎沢社長と面識があったの?」

「もちろんありますよ。
 漣社長のお得意様ですからね。
 秘書として何度かは…。
 ですが、あの方が息子だったとは…」

顎に手を当てて何か考えている。