品のある白髪が綺麗で
目元は切れ長で、目力がとても強い。
皺1つない黒のスーツと紺ネクタイでビシッと決めて、立ち姿といい背筋が良く渋い男性の象徴のよう。
「あの…どちら様でしょうか?
アポイントがありませんと社長は今、席を――」
「承知で伺いました。
漣社長の御息女さま」
ズバッと言葉を遮ったその男性は
”私をお忘れか?”とわたしに訊ねた。
わたしはこの人と
どこかで会った?…気もするような。
うーん…
首を傾げるわたしの一方
その様子を室内から見ていた燈冴くんと鮎沢さんだったが…
「父さんッ」
「えッ!?」
仕事をしていた彼は手を止めて立ち上がり
少し驚いた表情で男性を”父”と言うものだから
わたしまで声に出して驚いてしまった。
だってお父さんって…
「鮎沢さんのお父様…ってことは・・・」
男性が誰だか思い出したことにハッと気が付き瞬きを数回。
「入っても宜しいですか?」
「あ、はい!すみませんっ
どうぞ!」
タジタジになりながら招き入れると
男性は今度は燈冴くんと顔を合わせた。
「久しいですね、真白くん」
「ご無沙汰しております、鮎沢社長」
燈冴くんは全部わかっていたみたいで
男性の挨拶に表情1つ変えずに会釈して応えた。



