無彩色なキミに恋をして。


両者一歩も譲る事なく誹謗が飛び交う。

この状況を父が見たら呆れるよ。
仕事復帰するまでにはどうにかしないとだけど
どうにか出来たら苦労しないし・・

燈冴くんがこんなに感情を表に出すのだって
ほとんどない。

「漣社長の退院はいつくらいの予定なんです?」

「体調の回復次第だけど
 1週間は様子を見るようにって…」

「じゃぁそれまでは僕も頑張らないといけませんね」

鮎沢さんはグレーの手帳を胸ポケットから取り出して、『そうなると今後の予定は…』と真剣な顔つきで何やらメモをしている。

「鮎沢様が心配されずとも
 社長の仕事、身の回りは私が致しますので。」

「そのアナタがいるから不安なんでしょうが。」

ダメだ…
これじゃまともな会話なんて出来ない。
きっとこの2人の溝が埋まる事は永遠にないんだろうな…

険悪なムード漂う社長室で
燈冴くんはお茶の準備、鮎沢さんが自分の仕事をしているとき
部屋をコンコン…と数回、ノックする音がした。

「わたしが対応するから大丈夫」

紅茶の葉をティーポットに淹れている燈冴くんも気が付いてその手を止めようとしてくれたけど、わたしが先に彼を止めてドアを開けた。

そこに立っていたのは50代~60代くらいの男性が1人。