時間はもう昼近くになっていて
入院手続きを済ませ自宅へと一度帰ると
浮かない表情の燈冴くんに出迎えられた。

「本当に何と言ったらいいのか…
 私が社長から離れたばかりに無理をさせてしまって、これでは本当に秘書として失格です…」

昼食のクリームパスタを準備する彼は
終始ずっと責任を感じていて後悔ばかりを口にしながら、溜め息を吐いていた。

「燈冴くんのせいじゃないよ。
 って、わたしも人の事が言えないんだけどね…
 全然気づかなかったし、何も手伝わなかったから…」

わたしもわたしで憂鬱な気分でテーブルにつき
倒れた時に一緒にいてくれたハウスキーパーさんさえも、沈うつに表情を曇らせている。

これじゃまるでお通夜みたい…
でもみんな、それくらい気に病んでる。

「緋奈星さまはこの後、会社へ戻られるんですか?」

「うん、一応ね。
 しばらくお父さんが休んじゃうから何かと大変だろうし…
 あ、でももう燈冴くんがいるから大丈夫か」

「はい。会社の方は私にお任せください。
 きちんと秘書としての業務は全うしますので。」

「うん。ありがとう」

テーブルに運んでくれた料理を前に
『いただきます』と手を合わせると
彼も隣で飲み物の準備をしてくれている。

いつもの風景なはずなのに
決して当たり前じゃない、この幸せ。