「とりあえず話は病室を出てにしませんか?
 お父さんも休ませたいですし…」

こんな所でバチバチされるわけにもいかず
わたしは逃げ道のように提案。

すると最初に反応してくれたのは
やっぱり燈冴くんだった。

「それもそうですね。
 大勢でいては社長の体に障ります。
 それに、こんな《《よくわからない》》方がいるなら尚更」

こっちもこっちで棘が刺さる。
嫌味なんて通り越して、もうこれは完全に喧嘩を売ってるようにしか聞こえないんですけど。

病室を出て、誰もいない静かな廊下を
わたしを先頭に、右斜め後ろを燈冴くん
左後ろの更に離れた先から追う鮎沢さん。

この2人の間に挟まれて
何度も息が詰まりそうになる。


「それで、真白さん…と仰いましたっけ。
 秘書と執事というのは、いったいどういう事で?」

「それより貴方の自己紹介が先なのでは?
《《事》》 の順序を考えて頂きたいんですが。」

お互いの口が開く度
見えない雷の衝突を感じてわたしが硬直状態。

「それもそうでしたね、失礼。
 僕の名前は鮎沢です。
 漣社長直々に会社の後任を命じられており
 そちらの緋奈星さんの、”婚約者”でもあります」

『どうですか、勝ちましたよ』とでも言いたいのか
目を細め”フッ”と薄ら笑いを浮かべる彼は、悪い顔をしている。