「緋奈星さま、それは…」
眉がピクリと動き、無彩色な瞳に色が戻り始めた。
今の彼にわたしが出来る事なんて
何もないかもしれないけど…
でも、ほんの少しでも抱える苦しみから解放させてあげたかった。
「確かにわたしには、燈冴くんの背負ってきたモノの重みを全部理解する事なんて出来ない。それは本人にしかわからないし、他人がとやかく言う事じゃない。それでも、愛情は平等であってほしいと思う。わたしと父にこんなにも愛情を向けてくれる燈冴くんが、自分だけ暗い中で独りで戦っているなんて…そんなの辛すぎる。そして燈冴くんのお父さんだって、このまんまなんて絶対ダメだからッ」
一気に捲し立てるように喋っていたけど
その間、燈冴くんの表情に影を感じてしまい
言い過ぎたって、途端に口を閉じた。
怒られる。
そんな気がした。
「ご、ごめんない…
何も知らないくせに余計な事を言ってしまって…」
慌ててお詫びの言葉を口にしたけど
今さら取り消しなんて出来るわけがないから
急激に襲うのは、後悔。
しかし彼は
目を閉じて首をゆっくりと左右に振った。
「嬉しかったです。
私の事なんて気に掛けてくださって。
その気持ちだけで十分」
満足したように言いながらも
力なく笑う表情に複雑さを感じる。



