お父さんだって1人ぼっち…
「燈冴くんは…
これからどうするの?」
「私は…そうですね。
社長と緋奈星さまが宜しければ
また御使いしたいと考えておりますが…
ですが、もう必要ないですかね?」
複雑な笑顔を向ける燈冴くん。
きっと彼も今、怖いんだと思う。
家族だと言ってくれた父から拒絶される事を。
わたしだって…
「そんなの
帰ってきてほしいに決まってるよ。
ずっと待っていたんだから…」
「緋奈星さま…」
「父も同じ気持ちだよ?
燈冴くんの居場所を残したいから
だから倒れるまで秘書の代役なんて必要ないんだって頑なに拒んでた。
わたし達は2人とも
貴方の帰りを待ってた」
言いながらまた込み上げるものがあって涙で視界が霞む。
父のあんな弱くて素直な言葉を聞けたのは
それくらい燈冴くんを必要だと思っているから
改めてそれを知って、また目の奥が熱くなる。
だけどそれで全部丸く収まる話じゃないから
零れそうになる涙をグッと堪え
顔を上げて燈冴くんを見据えて言葉にした。
「だけど…燈冴くんのお父さんの事も
このままにしちゃいけない。
血の繋がりだけで家族だと思っていないなんて…
燈冴くんにそんな思いさせたままもイヤ!」
肩を落としメソメソしていたわたしの態度から
急に背筋を伸ばし強い口調に変わった事で
彼には響いたみたい。



