廊下から窓の外に目を移す燈冴くん。
遠くを見つめているその瞳に光が映っていない。
余程毛嫌いしているのか
今彼の中では、どんな思いに苦しめられているんだろう…
「それで、お父さんの具合は…?」
「風邪を拗らせて肺炎になったみたいですが
残念ながらまだ生きています。
悪運の強い人みたいで。」
「だからそんな言い方…」
「いいんですよ、もう。
私にとっては興味がない事ですから。
それより…また出て来ても犯罪を犯すか私のところに金銭をせがみに来るだけなので、しばらく大人しく入って貰っていた方がいい」
”冷酷非道”
そう聞こえる言葉なのに
燈冴くんがあまりに哀しそうに見えるのは…
どうして?
本当は歩み寄りたいとか
もっと話をしたいとか…
たった1人の本物の家族に
思う事は他に何もないの?
これが彼の
たまに見せていた”闇”の部分?
黒い部分?
そんなの…可哀想すぎる。
「緋奈星さまが言いたいことは
わかっていますよ」
光を失った瞳が窓から今度はわたしに向けられ
無感情の中に心を見透かされているみたいで
体が強張る。
「私は親不孝者なので
あなたが思っているほど優しくはないんです」
「燈冴くんは優しいよ!
そんなのわたしが1番よくわかってる!」
だけど…このままじゃ――――



