え…―――
燈冴くんのお父さんが犯罪者…?
「もう何度も逮捕されていて
文字通り、私達はどん底に陥った。
”家族”という繋がりは初めからなかったけれど
《《血の繋がり》》という鎖があるから
ずっと私達に付きまとう。
世間からの目も厳しく忌み嫌われて
母もボロボロになり病んでしまい、そのまま――」
「そのままって…」
険しい表情で話していた燈冴くんだったけど
『そんな時…』と顔を上げてわたしの目をまっすぐ見つめて続ける。
「漣社長が秘書としても、そして執事としても
私を受け入れてくれたんです。
『自分の人生を歩きなさい』と、そう仰って。
私の今があるのは社長のおかげ。
もうここが”家族”なんですよね。」
しっかりとした口調で話す彼から
”拾ってもらった” あの意味が繋がる。
時折見せる穏やかな表情から
どこかホッとしているようにすらも感じた。
「昔の話をし過ぎてしまいました。
今回の私が出て行った説明に戻しますと
その実の父親が体を壊し入院したとの連絡を頂いたので…本当は行きたくはありませんでしたが
漣社長のご厚意で…」
溜め息交じりに
どんよりとした言い方。
あの夜、私が聞いた父と燈冴くんの会話の一部始終が、ここに当てはまる事がわかった。
「今もしっかりと刑務所生活なんですよね、あの人…。
なのに挙句、病気って…」



