無彩色なキミに恋をして。


それから燈冴くんの口から説明された話は
とても残酷なものだった―――――


「昔から父親はどうしようもない人で
 仕事もせずにお酒やギャンブルばかりでした。
 借金作って、母に手を上げて…
 それなのに離婚もせず、母は父の面倒まで見ていました」

「そう…なんだ」

「私は…そんな父が、憎くて仕方なかった。
 あんな大人にはなりたくないと
 子供ながらに避け続けて。
 高校を卒業し、大学に行って…
 ちょうどその頃、緋奈星さまの御父上とお会いしたんです」

「お父さんと?」

「はい。もともとは大手企業に就職する事ばかりを考えていて、漣社長の会社にも興味はあったんですが…
 実際にお会いして、とても実直で堂々としている方だと知りました」

初めて聞かされた燈冴くんのご両親のこと。
お父さんがそんな人とは知らなかったし
わたしの父のところで働く経緯も初めて聞いた。

「燈冴くん、私に言ったよね。
 ”父に拾ってもらった”って。
 あれってどういう…」

「それは…」

余程、言いづらい事なのか言いたくないのか
表情を歪めて下唇を薄く噛む。

聞いちゃいけない雰囲気を感じるけど
彼は重たい口を開いて話してくれた。

「実は…私の父親はお金に困ってヤミ金に手を出し
 それも返せなくなって窃盗を繰り返したんです」