無彩色なキミに恋をして。


「それで…話って…?」

彼の後を追うように一定の距離で歩きながら
その背に話し掛けたのは私から。

「緋奈星さまは…御父上が好きですか?」

振り返りながら聞き返されて立ち止まる。

「え…なに、急に…」

「私は、漣社長が父親ならどれほど良かったかと…
 あの人は良く出来た御方に見えます」

「待って、燈冴くん
 いきなり何?話が見えない…」

どうして彼が父の話をするのか
わたしにその意図が伝わってこない。

でもそこには
彼が言いたい大きな意味が隠されていた。

「私が緋奈星さま達の元から離れたあとですが…
 実は今まで…自分の”父親”の所に戻っていたんです」

「お父さん…?」

それは
わたしも知らなかった燈冴くんの”家族”の話。
彼の抱える闇の部分。

「でも燈冴くん、前に家族はいないって…」

「そう…ですね。
 すみません、あれは少し嘘をつきました。
 実際は《《血の繋がりだけの存在でしか》》ないの間違いです」

聞けば聞くほど
彼の言ってる意味を理解するのが難しかった。

ただ、含む言葉の裏には冷たいものしか感じない。

「私の母親は数年前に他界していまして
 ですが残念ながら父親は健在なんです」

「残念って…そんな言い方…」

どうしてそんなに思いつめたように目を伏せるの?