病院に付き添ったとき慌てて家を飛び出したわたしは、荷物も持たず手ぶらで来てしまったけれど
唯一ポケットに入れていたスマホを取り出して
廊下で燈冴くんの留守電にメッセージを残した。
燈冴くん…
これを聞いたら連絡をください。
お父さんが…倒れてしまいました―――
まるで業務連絡みたいな言葉だけで
わたしは言いながら、泣きそうになった。
本当はもっと色々と残したかったのに。
『何しているの?早く帰ってきてよ』って
怒りたい気持ちもあるはずなのに…
今はただ
その言葉しか口に出せなかった。
ーーー翌朝。
1番に役員方へ一報を入れ会社の対応は任せることにし、地理の目が覚めたらこちらからまた連絡すると伝え、今は面会も謝絶にさせてもらった。
鮎沢さんにも念のため連絡は入れたけど
彼にもまた、今は来ないでほしいと…お願いをした。
身勝手な理由だけど
私が鮎沢さんの顔を見たくなかったから…ーーー
陽が完全に昇った頃
睡眠と点滴おかげか、父の顔色も良くなり
目も覚ました。
「緋奈星…?」
「お父さんッ!
大丈夫ッ!?」
「あぁ…ここは…病院か?」
「そうだよ!
覚えてない?昨日部屋で倒れたんだよ?」
『そうか…』と記憶を思い出すように呟きながら
体を起こそうとするから、私も背中を支えて手伝う。



