無彩色なキミに恋をして。


父の病室の前を不安そうな表情で右へ左へ
行ったり来たりと落ち着きのないハウスキーパーさん。
雇っている家主が目の前で倒れたんだから無理もない。

社長が倒れたなんて社員も知れば会社も大騒ぎになる。
取引先とか、他は誰が知らないとマズイ?
早めに役員の方々の耳には入れるべきだろうけど
だからってこんな深夜に連絡をするわけにもいかないから、陽が昇った朝に報告しよう。

今はとにかく父が目を覚ます事を祈りながら
わたしは枕元に椅子を移動させ、ずっと見守っていた。

「お父さん…どうしてこんな…」

今までどんなに忙しい日々が続いても
1度だって倒れた事なんてなかった。
風邪だって引いたところを見た事ないくらい
体調管理は徹底していたはずなのに。

何をそこまで追い詰められていたの…?
やっぱり会社の経営のこと?
後継者の鮎沢さんのこと?

もともと口下手で意固地な父は自分の事なんて話さない人だから、どうして無理をしたかなんて
目を覚ました時に聞いたとしても絶対教えてくれないと思う。

こういう時、燈冴くんならどうしていたんだろ…
そもそも彼がいればこんな事にはならなかったのかな…

そんなの思っちゃいけないって頭ではわかっているけれど、このままだと、お父さんの体がダメになっちゃう…