父と”婚約者”と名乗る男性から
突然”お見合い・買収・結婚”の話を受けて
頭も心も整理が追い付かないままその日1日モヤモヤした気持ちで過ぎていく。

父が婚約を否定しなかったところを見ると
鮎沢さんの言うように
”社長同士が結託して企んでいる”のはたぶん間違いない。
確かに漣家は1人娘で跡取りとなる”息子”がいないから会社の後継者を捜すのは困難。

であれば、経営を担っている得意先に相談するのも理解出来る。
そこでどうなって急に”婚約”まで進んだのか
水面下で何が起きているのか…
わたしは何1つ今まで把握してこなかった。

なんとなく、ぼんやりと
”燈冴くんがいるから大丈夫”
そう…勝手に安心していたのかもしれない。

でもそれは間違いだった。

燈冴くんは出て行ったきり連絡もないし
どこで何しているのか父も未だに教えてくれない。
あまりに何も言ってくれないから
もう帰って来ないのかなって…
最近、ふと頭に過る事がある。

もう忘れるべきなのかなって――


父ともほとんど会話をする事がなくなった。
社長として忙しい人だし
もともとお互い生活スタイルも違うから
以前と変わらないと言えば変わらないんだけど…
燈冴くんがいなくなってから
そして今回の婚約の話が出てからは、特に――