「思ったより言うコだね」

彼に目を向ける事なく俯き加減に横を素通りしようとすると、わたしの前に移動して足止めさせられてしまった。

「…なんですか」

下から見上げて目で『退いて』と訴えたけれど
それが伝わる事もなく、その瞳に映るは冷淡な眼差しだけ。

「何が目的かって勘が良いあたり
 単なる世間知らずの裕福お嬢様ってワケでもないか」

「なッ」

そこまで言うなんて
どれだけ失礼な人なの!?

「《《ただ》》のお見合いで初対面同士を本当に婚約させるなんて、キミだって信じてはいないだろう?」

目を細めてわたしの心まで見透かそうとするこの人に、背筋がゾワッとする。

底知れぬ恐怖に
聞きたいけど…耳を塞ぎたくなる。


「たぶん目的は…
 買収。」


「え…ーーーー」


買収…?ーー


「まぁ…それは言い過ぎか。
 Ripple clownの今後の経営方針として
 お互いの社長同士で結託し娘と息子を結婚させ
 後継者を作るってところかな」

彼の言ってる言葉が頭に入って来ない…


父から今まで1度だって聞いた事がなかった。
確かに調べる事もしなかったけど
怪しい素振りがないから知り得なかった。

けれど、もしこの話が本当なら
ずっと黙っていたのにいきなりどうして?
それもなぜ秘書である燈冴くんのいない、今?

この人も信用出来る保証はないし…


「まぁ何にしても
 これから宜しくね、緋奈星さん」



わたしは何を信じればいいの?


これからどうなってしまうのーーーーー