「さっきから“みたい”とか“っぽい”とか
なぜ曖昧なんです?」
「あ、確かにそう言ってるね」
いいかげんハッキリしてほしいのに
当人は『無意識だったぁ』なんて軽いノリばかり。
やっぱり故意なんじゃないのかな…。
「まぁ正直、僕もよくわからないんだよね。
詳しい事は聞いてないし。
今日はただ《《その婚約者》》に挨拶に来ただけだから
詳しい話なら、お父上に聞いた方がいいんじゃないかな」
2つの珈琲を持って戻ってきた彼は1つをわたしに差し出しながら、ようやく話を再開してくれたけれど、聞きながら愕然とした。
「説明…されていないんですか?
それなのに受け入れて
アナタはそれで良いんですか?」
「そうだねぇ…
別に僕は気にしないかなぁ」
ニコニコしながら美味しそうに珈琲を飲み
婚約をアッサリ受け入れていて唖然。
この人に聞いても埒が明かない。
そう思ったわたしは父に直接確認するため
『失礼します』と彼に別れを告げて休憩室を飛び出した。
燈冴くんが出て行ってしまってから1ヶ月。
何の連絡もなくて、いつ帰ってくるかもわからない不安な毎日なのに…今度はわたしに縁談の話?
父はどういうつもりでそんな話を持ち掛けたのかわからないけど、わたしは燈冴くんが好きだから。
その気持ちに気付いたから
他の人と結婚なんてしたくない。



